レジェンド&バタフライ
2023.2.19 毎日投稿 第49回
友人と一緒にレジェンド&バタフライを観た。
歴史エンタメは、作る人の自己解釈がいろいろあって面白い。
この作品も、面白い解釈をしていた。
桶狭間の戦いの勝敗を決定づけたのは、濃姫だったという解釈。
あの時代、女性が戦の諸々に口を挟むなど許されなかったはずだ。
現に信長と濃姫の軍議を目の当たりにしていた家臣には「この事は他言無用。殿一人で考え敦盛を踊ったと伝えよ」と言っていた。
序盤では、歴史を動かしたキーマンが濃姫であったという印象付けが強くされている。
歴史にリアリティを求めるのは、ナンセンスだとも思うし、面白い切り口だと思った。
残念に思ったのは、信長に対する描写が少なかったことだ。
彼が狂ったきっかけは、浅井長政の謀反であったという風に僕は捉えたが、もしかしたら違うかもしれない。
比叡山を根切りにしたのも、信長が第六天魔王を名乗ったのもシーンとしてはあったが、彼の心の内はあまり描写されない。
ただ、木村拓哉の演技は素晴らしいと思った。
たぶん、演技でそのあたりのカバーをしていたように思う。
狂いながら苦悶にのたうつ演技には、鬼気迫るものもあったし、濃姫に対しての想いを口にしない信長の拗らせ具合も良かったと思う。
信長が本能寺で襲撃される過程に関しては、映画館で爆笑しそうになってしまった。
明智光秀が謀反を起こすのは、史実に基づく。
しかし、謀反を起こした理由を要約すると「魔王じゃなくなった信長様なんて天下人じゃないもん! 信長様は私に許せなんて謝ったりしないもん!」である。
とんだ厄介オタクである。
信長が本能寺で死ぬ寸前に観る妄想は、信長がチンギスハンであるという説を彼の都合のいい幸せな妄想として描かれ、その儚さと残酷な現実の物悲しさが在って胸が詰まった。
歴史にIFは禁忌であるが、歴史にロマンを抱いてしまうのは、仕方ないと僕は思うのである。
鯉庵