ツイッターでも呟きましたが、作品の宣伝を繰り返ししていたため少し自重します。というのも体験版を公開以降、鬼哭廻牢について情報を公開出来ずにいました。
以前にも言ったかもしれませんが、製品版の完成度は70%ほどです。
スチルも音楽も効果音もかなり揃っていて細かい部分の演出やまだ完成していないスチルを埋め込めばすぐにでも公開できるところまでは来ています。
ただ情報として公開できる範囲の事は全て公開してますので現状お待ちいただいている方には申し訳ないのですがしばらく時間がかかるというのをご了承頂きたいです。
さて、ツイッターでも呟きましたが鬼哭廻牢は非常にシンプルな構造をしていまして他のフリーゲームや同人ゲームのようなギミックがほとんどありません。
兎角演出には拘ってますが選択肢もなければ立ち絵もない。
これを一種の個性として作る事に決めました。
正直これにより私の作業量が激減したのですが、企画の段階でそのことは決まっていました。
元々鬼哭廻牢というのは、自身が執筆中の二次創作「恋する赤鬼」のオリジナル部分を新たに描き下ろし世界観を独自に再構築させて書いたものです。
完全に自分が楽しむために作ったので友人にデバックしてもらった際「読者置いてきぼりだねこれww」と言われてしまいまいました。
まぁそれを言われてから少しは改善したのですが曰く、「書きたい部分を優先してるから繋がりがない。故に唐突すぎて付いていけない」という、何とも致命的な指摘をされてしまいました。
自身も心当たりがあるので言い返せなかったので、改善しましたがw
さて、ここで唐突にシナリオの書き方というか普段どういう風にシナリオを書くかという事を書き留めておこうと思います。
私の場合は……
物語のコンセプトを決める。
↓
主人公とヒロインのキャラクターを作る。
↓
それを取り巻く人々と関係性を構築。
↓
まずはその場のテンションで書く。
↓
時間をおいて読み返し校正。
↓
これをプロットに清書。
という流れで、非常に効率が悪い気がしますw
調べものとかはまぁ書いてる途中にすることが多いですね。
あ、ついでに持論を言うと小説家になりたい人は勉強できないといけません。
知識の量や質もそうなんですが、勉強できない人って要領悪くて整理が下手なんですよね。
これは私が実際にその手の人間なのでいつも「学生時代勉強しておけばなぁ」と思うことが多々あります。
こういう事を書いてる時点で頭悪いんですが勉強が出来る人っていうのは詰まる所「要領がよくて効率よく知識を取り入れられる」人なので小説とかで専門知識を身に着けたりする場合、どういう風に調べればいいかってのが分かってるので無駄がないんですよね……普段から勉強しなくても要領良いから短時間でも身に付くんでしょう。
これが分かってない人はとりあえず入門書買って、一から読むという非常に効率が悪く時間の無駄で書かれている情報量に圧倒され結果、途中でという事にw←ブーメラン
話がとっ散らかりましたが、小説とかってある種の知識自慢的な要素もあると思うんですよねぇwマニアックなw
これが上手い人は物語の中に自然と組み込む事が出来て面白いものに昇華出来るんですよ。
まぁ中には知識自慢したいだけの人もいますが。
自分は出来れば前者で居たいですw
話を戻します。
基本的に清書の前段階で結構な肉付けをしてはいるんですが、やはりアドレナリンが出てるのか一日置くとダメな部分ってのが結構出てきます。そこで崩して一から書き直す事もあれば手直し程度にとどめる場合もあります。大抵書き直すんですがw
ここで気を付けないといけないのが「何度も何度も書き直す」という事。
これは私のような素人にありがちな一種の病気なんです。
プロの方はここが違うんだと思います。
書き直すという行為は自信の無さから来るもので「これで本当に大丈夫か」と自問したあげく結局書き直すという事になるんです。
実際私はこれを過去3回ほど「恋する赤鬼」でやっておりますw
やっぱり自分の書いたものに自信が持てない人はプロに向いていないと思います。
ここでまた素人にありがちなのが「作品の一番のファンは自分である」とか、どっかから引っ張ってきたような言葉でさも自信があるようにみせるんですが、そういう事ではなく「面白いものだ」と断言できるものを書き上げる事が出来るという意味ですね。
前者と違うのは「自分以外の読者に読ませても面白い」と言わせる自信があるというところでしょうか。
まぁそういう作品を作りたいとは思ってますが……w
本当は執筆する際にこだわっていることとかも書きたかったんですが、どうもソレがちなので今日はこの辺にしようかと思います。
こんばんは。
鯉庵です。
熱くて寝つけないので日記を書いて気を紛らわすことにします。
えー……鬼哭廻牢の体験版を公開して数日プレイしていただきありがとうございます。
実のところ今回体験版をアップしたのは動作確認という名目も大きかったです。
実際に製品版を販売した後にプレイできないという事態があっては一大事ですのでw
今のところ不具合報告もないので一先ず安心しております。
さて、鬼哭廻牢は全部で【餓鬼・畜生・追憶(人間)・修羅・天・地獄】という構成で行こうと考えてます、
餓鬼・畜生編のシナリオはもう100%書きあがっていて現在は追憶・人間道の部分を書いてるんですが現段階では私鯉庵としては珍しい一人称視点でシナリオを書いてます。
これまでも何度かチャレンジしてますが、私は3人称の方が書きやすいかなぁと思ってます。まぁぶっちゃけると女性視点でのモノの書き方が難しくあの娘を書くときってすごく気を遣うんです。
あの娘の気品や女性らしさというのは男から見た作者(鯉庵)の理想なので、本当に女性らしさとかが書けてるかと自問すると頭を抱えてしまうわけです。
そうやって悩みながら今現在書いています。
話は変わりますが、鬼哭廻牢を完成させようと思う傍ら実は鬼哭廻牢とは別のエロゲを作りたいなぁという野望を抱いていて頭の中ではそのシナリオも渦巻いています。
因みにこちらの方がエロゲっぽかったりしますwちゃんと√分岐もあるしwただ本当に頭の中で楽しんでるだけなんですがw
体験版出しただけなのに少し落ち着いてこんなことを考えてしまいます。
製品版もなるべく早く出したいなぁ……。
では、これからますます暑くなっていきますので、皆様もお体に気を付けてお過ごしください。
こんにちは。鯉庵です。
体験版をプレイして頂きありがとうございます。
さて、タイトルに書きましたが製品版におけるあとがきの有無についてアンケートを取っていますのでご協力ください。
昨今同人に於けるあとがきの是非が問われてますが需要が知りたいです。
「そんなん知るか自分で決めろ」という方がいるかもしれませんが、意見が知りたいのでご協力くださいませ。
アンケート
こんばんは。
お待たせしましたー!
【鬼哭廻廊~餓鬼・畜生編~】の体験版公開です。
是非プレイしてください!
感想などもお待ちしております!
鬼哭廻牢体験版不具合等ありましたらこちらのブログかツイッターまでお願いします。
https://twitter.com/rian_nekomiya
“畜生道”——其処は人から獣へと堕ちた者達が支配する世界。
岩盤の下からは紫色の光が差して、見渡せば、其処彼処に散らばった獣の残骸が転がっている。
此処もまた腐臭が漂う地獄の一角。そんな場所には不釣り合いな、美しい女が一人、ゆっくりとした足取りで歩みを進めている。
よおく見ればその女、全身に夥しい血がこべり付いているではないか。
顔の半分は血にまみれ、肢体も其れに同じ。さぞ美しかったであろう着物は見るも無残にぼろ布と化している。
一際眼を引く紅く長い髪も血を浴びて、黒く変色してしまっていた。 金色の瞳は濁り、酷く冷たい。それにしても解せないのは、これだけ血に塗れても平気な顔をしている事だ。足を引きずるでも無く、苦痛に悶え苦しんでいる訳でもない。その表情は、恍惚としていて何処か妖艶であった。
そう、全身に纏った血は全て彼女が浴びた返り血だった。一体、どれ程の命を狩ればこんな姿になるのだろうか。正に修羅の如き強さ。女の周りには何人も寄りつきはしない。
唐突に、女の歩みが止まる。腰を屈めて口を開いた。
「……可哀そうに」
其れは一匹の子猫。銀色の毛並みに、紅い虎縞模様が浮かんだ小さな小さな猫であった。片耳は失われ、右前足には何かに喰い千切られた痕が残っていた。血に塗れた掌でそっと頭を撫でてやる。すると、残った耳が微かに動いた。
「まぁ、まだ生きているのね……ねえ、小さな猫さん。私、貴方みたいな綺麗で可愛い子は大好きよ。私と一緒に貴方を苛めた悪い悪い鬼を退治しに行きましょう」
猫は、必死に顔を上げて女の指先を舌で舐めた。もう、鳴き声を発する事も困難なのだろう。
女は満足そうに微笑んで、仕込刀を抜き、あろうことか自分の指先を刃に押し当てた。
刀身から紅い滴が落ちる。其れを猫の口に垂らしてやった。すると、淡い光が子猫を包み込んゆく。
奇想天外、猫を瀕死に追い込んだ傷が癒えて、足も耳も元に戻ってしまった。
瞼が開く。大きく美しい銀色の瞳。きっと、一番驚いて居るのは、他ならぬ猫であろう。
立ちあがって、女にすり寄り掌を舐めている。彼女は瞳を細めて微笑んだ。下顎を撫でてやると、気持ちよさそうにして、小さく愛らしい鳴き声が漏れる。
「可愛い子。貴方、お名前は?」
子猫は上目遣いで女を見つめている。
「そう、名前がないのね……そうだ、私が貴方に名前を付けてあげるわ。そうね"雪那"(せつな)というのはどうかしら? 貴方にぴったりよ」
まるで、親が子に名を贈る様に女は子猫を雪那と名付けた。
◆◆◆
『貴様、其処で何をしている』
◆◆◆
声。背後から耳に届く。
大凡、人ではない事は姿を見ずともそう直感した。殺気と共に惜しげもなく注がれる敵意。
先程、雪那と名付けられた猫又の子猫は怯えきって身体を震わせていた。女の顔は、一転して目つきが鋭くなり、見るからに不機嫌そうである。
「無粋な輩ですこと……せっかくこんなに可愛い子とお話して居たのに」
立ちあがって振り返る。其処に立っていたのは見上げるほどの巨人。
いや、人ではない化け物だった。漆黒の鎧を身に纏い、その手には巨大な斧を持ち、腰にはこれまた巨大な日本刀を帯びている。
その頭部は、獅子の其れだった。百獣の王に相応しい鬣に爛々とした獣の瞳。その覇気は見る者を圧倒する。
『もう一度、問おう。貴様、其処で何をしている』
獣人の問いに背筋が震え上がるほどの艶笑を浮かべてぽつりと一言。
「……——鬼退治」
鋭利な風が獅子の鬣を靡かせた。視界に紅い液体が映る。
其れが己の鮮血であることを理解するのに数秒かかった。
恐る恐る視線を動かすと、右肩は見事に消し飛んでいるではないか。
とめどなく溢れる鮮血は耳鳴りのような不快な音を鳴らす。
その光景を目の当たりにし、初めて痛みを認識した。
咆哮。そう、咆哮だ。岩盤を揺さぶるほどの野太い叫び。
残った片腕で傷口を抑えてもまるで収まる気配はない。
巨木の幹ほどに太い腕は、重力に逆らうことなく落下して地響きを上げ、砂塵が舞う。
獣人は痛みを怒りに変えて瞳孔を細め残った片腕で巨大な刃を高く振り上げて叩き付けた。
激しい縦揺れのあと、砂煙は徐々に薄らいでゆく。
『はぁ……はぁ』
この様子なら女も灰燼と化しているだろう。
岩盤にめり込んだ刀を抜き、ざまあみろと獣の貌が歪む。
しかし、そう思ったのも束の間、獅子の頸から滝の様に紅い血が滴り落ちた。
そのまま巨大な頭部が転げ落ちた。
ふわりと地面に降り立つ女。胸元から雪那が顔を出す。
「良かった。さぁ、雪那。鬼退治に行きましょう」
視線を落とし、優しく微笑んで修羅道を目指さんと歩み出した。しかし……。
「まぁ、困りました。雪那、そう簡単には通してくれないみたいだわ」
暗闇に浮かぶ幾つもの赤い瞳。
その全てが敵意を剥き出しにして女を射抜く。
女は、腰を屈めて刀の柄に握り締めた。
獣達は爪を立て、女の首を刈り取るその一瞬に備えた。
咆哮と共に一斉に飛びかかって、その牙で、その爪で女を引き裂こうと襲いかかった。
「アッハ」
実に愉快そうに女は嗤い鞘から勢い良く刀を引き抜く。目には見えない刃が獣達を一瞬で肉塊へと変えた。
怯み、後退してゆく獣達。女は身の毛もよだつ笑みを浮かべながら口を開く。
「貴方たちも此処に退屈でしょう? 私が遊び相手になってさしあげるわ」
言った瞬間、獣たちの視界から女が消えた。
狼の姿をした獣が甲高い鳴き声を発し倒れ込んだ。足は、見事骨まで断ち切られている。
女の姿は見えない。狂気に酔う笑い声だけが獣たちの耳に残った。
肉塊と血溜まりの中心で紅い雨に打たれながら女は笑っていた。
番傘に刀を納めるとチンっと小さな音が木霊した。
「あら?」
四方から聞こえてくる足音に女の長い耳が上下した。
『動くな!』
其れは、警告。
指先一つでも動かせば、彼女を取り囲む無数の刃が白い肌に突き刺さるだろう。漆黒の鎧を身に纏った獣人兵。その全てが女に敵意を向けていた。瞳は赤く充血し、金色の眼球は瞳孔が閉じて、鋭く女を睨みつけている。
「まだ、こんなにも鬼が居たのね」
己の身体を両腕で抱きしめながら喜びに打ち震える女の姿に獣兵たちは生唾を飲み込んだ。
数では此方が圧倒的に有利なはず。その気になればいつでも頸を刎ねる事は造作もないはずなのに、何故自分たちは怯えているのだろうか。
痺れを切らした虎の頭をした獣兵は、身の丈ほどある槍を頭上で回転させた後、獣の脚力をもって一蹴りで距離を縮めて来た。
一撃必殺の突き。女は避ける事も飛翔する事もなく、鞘に収めた刀を勢いよく引き抜いた。
すると、鼻先まで迫っていた槍が破裂音を立て粉微塵に砕けた。
驚愕に染まる虎の顔。瞬きする間に虎の頸は刎ねられ、岩盤に赤黒い雨が降り注ぐ。
牛頭の獣兵は雄叫びを上げて日本刀を振り上げ襲いかかった。
刃が交じれて、火花を散らし、牛頭の身の丈程ある太刀は、真っ二つに折れた。丸太のように太い腕は、肘上から刎ね飛び、鮮血を撒き散らす。
「あはははははははっ! ヒッ! キヒッ」
無慈悲に、残酷に、辛辣に冷徹に、瞳に映る命を狩って行く。その業は深く、決して満たされぬ飢えとなる。
その身に幾百、幾千もの血を浴びて一匹の赤鬼は踊り狂った。
『ばっ……化け物め!』
獣兵たちは恐怖した。此処は業深き者が堕ちる場所。獣の鬼達は、嘗て これほどまでに罪深き鬼を見た事は無かった。地獄へ堕ちて尚、己の赴くままにその刃で斬って、斬って、斬り捨てる。悦楽に溺れ、快感に酔い痴れる鬼。自分達とは"格"が違うのだと、その惨劇を目の当たりにして実感した。
「あぁ、あぁ、なんて美しいのかしら……肉を断つ感触。耳に残る血潮が吹き荒れる音、悶え苦しむその姿、素敵よ。とっても素敵だわ。さぁ、もっと私に見せて下さいな」
◆◆◆
「餓鬼界と畜生界が殲滅されただと?」
赤。壁一面が赤色で統一された部屋で不機嫌そうに紫煙を燻らせる男が一人。
真新しい畳の香りが心を落ち着かせるそんな一室。
木製の卓上には書類が文字通り山積みになっている。
丸窓の障子には桜の木が映し出されて居た。
胡坐を掻き不遜な態度で片肘を立てる男。黒い着流しには赤く燃え滾った炎が刺繍され、藍色の羽織には一匹の黒豹が大きく描かれていた。
黒く美しい髪は、男の左目を覆い隠す。その眼は深い赤色をしていた。
髪や耳には気品漂う装飾品を身に付け、女が見れば忽ちその色香に酔い痴れるであろう程の伊達男だ。
「うん、そうだよ。零(ゼロ)義兄さん。ここ四百年くらいで、"餓鬼"、"畜生"の鬼が斬殺されまくってるんだってさ。人の"容(かたち)"をした鬼にね……肢体や頸はバラバラ、そりゃもう阿鼻叫喚の嵐って話だよ? キシシ」
無邪気な表情を浮かべている少年は零と呼ばれた男に対面して正座しながら、湯呑みを傾ける。
銀髪に彩度の高い青い瞳。
額には、蒼角が一つ。天に向かって伸びている。
白を基調された着物の襟元や袖口には青い炎が燃え盛っている。漆黒の羽織の背には"修羅"の文字が刻まれていた。
「てめぇ、何呑気な事言ってやがる。クソったれが……餓鬼っていやぁ"三悪趣"じゃねえかよ」
零は拳を硬く握り、卓上へと振り下ろした。
横に置かれた湯呑みは倒れ、遠慮なく茶をぶちまける。
「まっ! そんなにカリカリしないでよ。義兄さん。多分、僕の所まで来ると思うからその時捕まえればいいでしょ? ふふん、楽しみだなぁ、どんな奴だろ? こんなにわくわくするのは"天釈帝"に喧嘩売る以来だね」
少年は、童の様な無垢な笑みを浮かべて想いを馳せていた。
零は紫煙をゆっくりと吐いて少年に忠告した。
「羅毘。お前、遊ぶんじゃねえぞ……最弱とは言え"三悪趣"の鬼だ。しかも、人の容を保ったままと来てやがる。是が非でもてめぇで片付けろ。"此処"へは通すなよ。厄介な事になるからな」
少年はにんまりと口の端を釣り上げてこう言った。
「僕を誰だと思ってるのさ、義兄さん。"闘神阿修羅"だよ? 餓鬼程度に手負うヘマはしないさ」
「…………だといいがな」
しんしんと雨が降り注ぐ。
空は分厚い灰色の雲に覆われて、雷の白光と豪音が雨音を掻き消す。
散歩にはむかない悪天候だというのに、一人の女が、真っ赤な番傘をさしてゆらゆらと歩いていた。
絹の様な黒く長い髪は、腰まで伸びていて、肌は雪の様に白く、瞳は黒耀石の如く、妖しく輝いている。
赤と黒の着物には黒椿の花弁が咲き誇り、胸元が大きく肌蹴て白いサラシがそこから覗く。
女の象徴たる膨らみは大きく、谷間から甘い香りを放っている。裾は酷く着崩れを起こし、白く長い足が露わになっていた。
着物を汚さぬよう裾を摘まんで地面を一蹴りして飛ぶ。
その表情は戯れる童と同じ。
不意に女の歩みが止まる。
真横に構える日本家屋の高く聳え立つ門前で、漆黒の外套を身に纏った男が女を待ち構えていた。
覆面の上からでは表情を伺い見る事は出来ない。
女は口を歪めて哂った。
「ふふ、珍しいお客さんです事……狗が何の用です」
男は、短く、抑揚のない声で一言。
「椿の魅姫とお見受けする。御命頂戴」
外套が音を立て捲れ上がった。腰に差した小太刀の柄を握ったまま、水溜りを蹴って、一直線に突進。
自分の命が狩られようとしているのに女は何を思ってか、手にした番傘を頭上へと放り投げた。
其れと同じく、黒尽くめの男は飛翔し、その刃を女へと突き立てた。 その距離僅か一寸程度。という所で、女が口を歪めほくそ笑んだ。
耳障りな音を立てながら赤黒い血が彼女に降り注いぐ。
堕ちて来る傘を片手で受け取り、内刀をして深い溜息を漏らした。
「ふう、狗の血で大事な御着物に汚れが付いてしまいました……お気に入りでしたのに……」
落胆も束の間、塀の上からぞろぞろと外套を身に纏った忍達が姿を現す。
「あら、あら、こんなに大勢の殿方に囲まれたのは初めて……ふふ、困ってしまいましたね」
言葉とは裏腹に、その貌は嬉々としていて、瞳の奥底から狂気を露わにさせている。鎌、鎖、刀、鉤爪。
多種多様な刃が彼女に襲い掛かる。
しかし、その全てが女に届く前に忍達の身体は、無残にも刻まれ、肉塊となり地面へと落ち。口の端を釣り上げ、声を上げて嗤う。
周りには殺気を放つ敵だけ。正に四面楚歌、それでも彼女は余裕の態度を崩さない。四方から鎖が女目掛けて放たれる。地面を一蹴にして高く飛翔し柱へと着地。忍達は一斉に上を向くがその姿はもう其処には無かった。
困惑する忍達。一人の頸が天高く舞った。その表情には驚愕も苦痛の色もない。斬られた事に気付きもしなかったのだ。
「キヒ」
短い哂い声の後、けたたましい流血の音と肉塊が辺りに散らばった。 命ある者は立ちすくみ、恐怖でたじろぐ。
女は虫でも見下ろすかの様な侮蔑に満ちた視線を浴びせた。
「あら、どうしたのですか? そんなに震えて……もっと私と遊んで下さいな」
言うのが早いか忍の視界を紅い番傘が覆う。一瞬の呆気。次の瞬間には眼球に刃が突き刺さる。
刀を抜くと嫌な音を立てて血が吹き荒れた。顔面に血飛沫を浴びて尚、狂気に満ちた貌で哂う。突如、女の左腕に鎖が巻き付けられた。
飛んできた方向に視線を向けると、ほくそ笑んで女とは思えぬ力で忍びを引き寄せる。眼前に迫った敵の眉間に刃を突き立てて、頭を串刺しにする。
「あっは! キヒッ! ヒヒヒ……」
腹を抱え、身を捩り哂う。狂った様に。
「ぐっ」
横に倒れていた忍が最後の力を振り絞り、女の足首に刀を突き刺した。
苦悶に歪む美しい顔。見下ろした後、忍の頸に刀を突き刺すと、虫の様にもがき、やがて力尽きる。
「大したものですね」
女の視界が急激に霞み、よろめく。其れを忍達は見逃さない。女の両腕に鎖鎌が巻きついてゆく。
三日月の刃が腕に突き刺さり血が滲む。仕込刀が女の手から落ちた。二人の忍が天高く飛翔し、襲い掛かる。絶対絶命。しかし、彼女の顔から笑みは消えない。
腕は拘束されても、まだ足がある。地面に落ちた刀をを蹴り上げて柄を口で噛む。頭を大きく振ると、着地する前に忍の身体は真っ二つに裂けた。鎖が音を立て垂れ落ちる。
激痛に歯を食い縛って耐えながら肩に刺さったままの鎌を乱雑に抜き取って放った。
「ふふ、自分の血を見るのは久々ね……腕も使い物にならなくなってしまったわ」
彼女の言う通り肩からは大量の血が流れ、血溜まりを作り出している。それでも、女は哂っていた。だが……。
「毒か……ああ、もう駄目ね」
そう言って力なく崩れ落ちた。感じるのは生暖かい感触。視界が紅く染まっていく。
「短い生涯でしたね……口惜しいのは、そう、恋も知らずに死ぬ事かしら」
女は己の死期がすぐ其処まで迫っていると悟っていた。自らの生涯を振り返り嘲笑した。ゆっくりと瞳を閉じる。最後に瞼の裏に浮かんだのは、母の笑顔であった。
◆◆◆
「――んっ」
水滴が女の頬を叩く。瞼を開くと、其処は冷たい岩盤の上だった。視界を覆うのは氷柱のように鋭く尖った岩。
漂う悪臭。
嘔吐物や糞塵が混ざった様な酷い臭いだった。
「此処……は……」
『ようやくお目覚めかい? ベッピンさん』
――声。
視線を動かすと、其処には小さな鬼が立っていた。赤黒い身体には、夥しい数の吹き出物が浮かんでいる。
酷くやせ細って、肋骨が浮き彫りになっているが、その腹部は水風船の様に大きく膨れ上がっていた。
頭には産毛と小さな角が生えており、腰には虎島模様のボロ布が巻かれている。
眼球は大きく、丸い金色をしていて、瞳孔は細く鋭い猫の様な瞳。
見る者を不快にさせる醜い小鬼は女の身体を舐めまわす様に見た後、黄ばんだ牙を覗かせて涎を垂らして、下卑た声で哂った。
『ヒヒヒ、アンタみたいな良い女が堕ちて来るのは久々だ……人の容を保ったままとは、余程業が深いと見える』
女は立ち上がり、鬼に向かって軽く頭を下げた。
「初めまして、小鬼さん。此処は一体どこですか」
彼女の問いに鬼は、こう応えた。
『地獄さ。アンタ、餓鬼道に堕ちたんだよ。自分の髪を見てみな』
言われて気付く。長く、黒かった髪は見事な紅色をしていた。
「まぁ、こんなに紅く……」
『へへ、今日からアンタも立派な鬼だよ? どうだい? 酷く飢えているだろう』
そう、飢え。先程から酷く飢えを感じている。喉は渇き切って今にも発狂してしまいそうになる程の飢えを。
「本当に酷く渇きますね」
『だろう? 実は俺もなんだ……さっきから喰いたくて喰いたくて仕方がないんだよ。其処で提案なんだが』
小鬼はにんまりと哂い。
『アンタを喰うってのはどうだい』
言うや否や人一人を丸呑み出来る程の大口を開けて襲い掛かる。が、空を斬る音と共に鬼の口は裂けて女の身体に赤黒い血がべっとりとこびり付いた。
鼻が曲がりそうなほどの腐臭が彼女の嗅覚を刺激する。口の中に広がる鉄の味に酷い不快感を覚え吐き捨てた。
「不味い」
岩山から小鬼が此方を覗き見ている。女に焦点を合わせ、一瞬の時を待つ。奇声と共に岩山から飛び出し鋭い爪を付き立てた。
女は、口の端を歪めほくそ笑む。番傘を広げ鬼の視界を塞ぐのとほぼ同時に頸が飛ぶ。
「フフフ、どうしましょう? これっぽちも満たされませんね」
女は、刀身に紅い舌を這わせた。身の毛もよだつ艶笑を浮かべながらゆっくりと歌い出す。
「鬼さん、此方。手の鳴る方へ」
暗闇の奥深くから金色の瞳が彼女を睨みつける。その数、ざっと百は下らないだろう。か細い腕には刃の欠けた日本刀が握られている。
『キエエエエッ』
耳を塞ぎたくなる様な甲高い奇声を発し、女に襲い掛かる。鬼の大群を目の前にしても、女は哂っていた。
「フフ。アッハ……アハハハハハハ! 鬼さん此方、手の鳴る方へ」
地獄という檻の中で、美しく妖しい鬼は己の業に蝕まれ、飢え狂う。満たされぬまま、彷徨い歩く。
◆◆◆
『はっ……はっ! ――チクショウ、チクショウめ! あり得ない、あり得ない! 堕ちたばかりの小娘が、あんな、あんな』
冷たい岩盤の上を汗を滲ませながら赤い鬼が走っている。その表情は恐怖で塗り潰され、絶望に満ち溢れていた。すぐ其処まで迫った死の恐怖。
息を切らしてただ必死に逃げた。
『此処は"餓鬼道"だぞ! なのに、なのに! どうして"阿修羅"みてぇに強え鬼が居やがるんだ』
足元が疎かであった為か、小石に躓いて勢い良く倒れ込んでしまう。痛みに顔を歪めている暇は無い。早く、早く、あの死臭漂う鬼から逃げなければ。
立ちあがろうとしたその時、鬼の頸筋に銀色の刃が添えられた。背筋に寒気が駆け抜ける。大量の唾を飲み込むと喉が大きく音を鳴らした。
「あら、あら、そんなに逃げる事ないじゃありませんか。私と一緒に遊びましょう」
声。
女の声。とても透き通っていて暗闇によく響いた。しかし、其れは余りに冷たい。
本能が告げる。この声の主は危険だと、一刻も早くこの場を離れなければ、死が訪れると鬼は悟って居た。
だが、動かない。まるで金縛りの様に、走り去るどころか指先一つ動かす事は出来なかった。
「良かった。まだ、一匹残っていたのね」
愉快そうに、新しい遊具を見つけたかの様な無邪気な声で女は言った。
「本当に、良かった。殺し過ぎて、誰も居なくなってしまったから」
小鬼が全身を震わせながら振り返る。
其処に立っていたのは、一人の女。背筋が凍る程の妖艶な笑みを浮かべ、侮蔑に塗れた視線を浴びせて来る。
怒りなど、到底沸いてこない。"恐い"という感情が止めどなく溢れる。
動け。と必死に震える身体に命令するが全く言う事を聞かない。
『助けて! 助けてくれ! もうアンタを喰おうなんて思ってない! 何でも、何でもするから助けてくれ』
顔を歪めて哀願する。紅い髪の女は切れ長の瞳を細めて哂った。
「ねえ、赤鬼さん。貴方に聞きたい事があるの。答えて頂けるかしら?」
『何でも教える! だから、だから! 命だけは』
女は、童の様に涙を流し命乞いをする小鬼の姿を酷く可笑しそうに見つめる。
「ふふ、良かった。ねえ、赤鬼さん。私(わたくし)喉が渇いて、渇いて仕方がないの……其れはもう狂ってしまいそうなくらいに……
けれど、もう此処には貴方と私しかいない……もっと沢山の糧が欲しいの。何処に行けば、貴方みたいな鬼が居るか、教えて下さらないかしら」
狂気を孕んだ瞳で真っすぐ見つめる。下顎を小刻みに震わせながら小鬼は答えた。
『そ、それなら、修羅の青鬼が居る場所へ行けばいい! この先にある赤い門を潜れば、別の"六道"へ行ける! 俺達、餓鬼よりももっともっと強い鬼が沢山いる! ア、アンタもきっと満足出来るさ』
「まぁ、それは本当?」
声を弾ませて女は笑う。まるで小さき童の様に愉しげにして。
『ほ、本当だとも! だから、いの――……』
言い終わる前に、鬼の頸が飛ぶ。断末魔を上げる事なく、天高く舞って、地面に叩きつけられ、ごろんと転がった。
頸から下の肢体は力なく垂れ下がって、膝を付き其処へと倒れ込んだ。肉塊か鮮血が溢れ、血溜まりを広げて行く。
「ふふ、あは、あっはははは!」
只一人の哂い声が灰色の檻に響き渡る。紅い髪をした美しい鬼は、ゆっくりと歩み出した。更なる糧を求めて……
こんばんは。鯉庵です。昨日家に溜まったパッケエロゲとタペストリーを売ってきました。5本のうち3本売れまして2本はROMの傷が酷くて戻ってきましたがまぁ7000円ほどで買値が付いたんでいいとします。皆さんもエロゲはちゃんと綺麗に保存しといたほうがいいですよー。結構いい値段で売れますから。
さて、雑記と書きましたが鬼哭廻牢の話をば。
猫宮の方で散々体験版出しますとか言ってましたがすいません。ちょっと思うところがあってプレイ動画をセルフで撮って流す形にしようと思います。
以前言ったかも知れませんが、今作には選択肢というものがありません。「ノベライズゲーム」と銘打ってきましたが実際は【挿絵とBGMをふんだんに盛り込んだ小説】と言った方が適切だと思います。
もう一つの特徴として【立ち絵】を一切使用していないというのが売りの一つなんですが、事ゲーム性という面に関してはほぼ皆無です。なので動画という形でプレイ動画とを視聴していただいて、今作の雰囲気と出来を見てもらい気に入っていただけたら……という風に考えています。
まぁ普通に体験版だしなよという意見もあるでしょうが今回はそれで勘弁していただきたい。
で、今現在にこにこムービーメーカーと格闘中です。
効果音素材の中に18禁でのご使用をお控えくださいという音があるのでその代りも探すor依頼せにゃいかんので時間はかかると思います。
あとしばらくしたらこちらの方に【恋する赤鬼】の小説を移すかもしれません。
まぁ多分ハーメルンの方が見やすいんでしょうけど、こんな日記ばっかというのもどうかと思いますので……。
おはようございます。
鯉庵です。
猫宮一家とは別に自分のブログを開設しました。
基本的にここでの記事は雑記です。
小説のネタやゲームの話、日記(愚痴)とかですかね。
まぁ見ても見なくてもという感じです。
自分は考え・主張を文章にまとめる事で頭の中がすっきりする性質なのでたぶん創作に関係ない話も多くなると思います。
で、ゲームの話ですが牛歩です。
はっきり言って進んでません。
とはいっても7割がた完成してますし、完成の目途はついています。
それと今はまだ発表できませんが、自分にとって最高にうれしい要素を追加することが出来そうです。
先も言ったようにまだ許可を取っていませんので何のことかは言えませんが私はとてもウキウキしております。
また許可が得られましたら発表したいと思いますので今しばらくお待ちください。