私信、相方への報酬SS
2023.12.23 毎日投稿 第353回
はじめに。
SSになりますが、久々に小説を書いてみました。
短いですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
※注意※
人を不快にさせる表現を多分に含んでおります。
場合によっては、気分を害する可能性がございますが、当方は責任を負いかねます。
ご了承の上、閲覧願います。
――――女ってのは、いい。
貪ってる間は、面倒な事を考えずに済むし、何よりガキを孕む。
ああ、早く生まれて来い。
ああ、早く閻魔(おれ)をこの罰(のろい)から解放してくれ。
ああ、早く早く閻魔(おれ)を終わらせてくれ。
簾(みす)の向こうで、淡い灯りが茫(ぼう)っと点っている。
橙色の灯りだった。
簾には、二つの影が映りこんでいる。
男と女の影だった。
二つの影は、激しくまぐわっていた。
「へばってんじゃあねえよ。まだ吐き出し切ってねえんだ。孕むまで閻魔(おれ)は手前(てめえ)の穴ぁ使わせてもらうぜ」
男は女の肉穴に、己の魔羅を乱雑に突き入れながら吠えるように言った。
女はそれに応えない。
呻きながら、喘ぐのみだった。
どうやら気をやってしまったらしい。
ひとでなしの耳をした女だった。
人の容(かたち)をした人に近しい獣の娘である。
髪と同じ灰色の瞳は、光を失って上を向いている。
目尻が赤く腫れていて、泣き喚いたであろう跡が伺える。
力なく項垂れる娘の腕をぐいと己の方へ引き寄せた。
女の肉体が、弓のように仰け反る。
細い首に腕を回して、締め上げた。
「ゆるいぞ、手前の穴ぁ」
ひゅ、と息を吐く音がした。
「あ、が、ぇ……」
閻魔の貌に、狂猛な笑みが浮かぶ。
熱した鉄のように赫(あか)い双眸(そうぼう)が炯々(けいけい)と光る。
「そうだぁ、いいぞぉ……ちゃんと締めろよ?」
存外に優しい声色で、低く囁いた。
女からの返答はないままだったが、解放された腕が狂ったように宙で踊っている。
「よかったなぁ! 手前はまだ生きてる。なら孕めるな」
閻魔の唇が、獰猛に吊り上がった。
捲れた唇の間から、白い歯が覗いて見える。
「ぁ……ぇ……」
女の瞳は涙に濡れて、眼球が真っ赤に染まっている。
「はっ! やっぱり畜生ってのは人より頑丈だなぁ……手前を選んでよかった。きっちり孕めよ?」
魔羅をひと際深く、女の膣(なか)へ潜り込ませて、白く濁った子種汁を好き勝手に迸らせた。
莨(たばこ)の先端を手で包むように囲う。
閻魔(おれ)の掌で、黒い火が瞬いた。
莨に火が点り、赤く熾(おこ)る。
深く紫煙を吸い込んで、肺腑に巡らせる。
鼻と口から紫煙吐き出して、後ろでへばっていやがる女(めす)に目をやった。
肉穴から閻魔(おれ)が吐き出した子種汁が零れて、女(めす)の内ももを這いずり落ちていた。
肉穴が鯉の口みてえに、ひくひくと蠢いて、閻魔(おれ)の子種汁を拒むように、外へ外へと追い出してやがる。
勿体ねぇなぁ。
汚くて、頓狂(まぬけ)な音を立てながら鳴いている。
どうやら肉穴が御釈迦(おしゃか)になったようだった。
「あれじゃ、もう使いもんにならねえなあ……まぁ、ゆるけりゃ、ガキもひり出し易いか。くく」
己の事ながら、随分と下衆な事を言う。
この女も、つくづく運が悪い。
哀れとすら思えちまう。
閻魔(おれ)に選ばれちまった。
別にこの女(めす)が気に入っただとか、惚れただとかそんな殊勝なわけもねぇ。
ただ単に、頑丈そうで、面倒くさい情って奴に振り回されねえ女(めす)だと思っただけ。
どのくらい前か忘れたが、やたらめったら頑丈で、閻魔(おれ)に縋ってきた女(めす)が居たっけなあ。
ありゃ、すげぇ女(めす)だった。
陰気な女で、真っ暗な髪に、真っ暗な瞳(め)をした女だった。
肌は蝋燭みてえに真っ白で、唇だけが真っ赤で……。
その唇の、形だけが笑みを浮かべていやがる。
ながぁい黒髪から覗き見える瞳(め)が、怖気(おどけ)立つほどおっかねぇ女だった。
抱いてやると存外と従順で、具合も良かった。
頑丈だったし、せがむみてぇに絞られたな。
飽きが来るまで食い散らかして、飽きたから捨てた。
閻魔(おれ)にとっちゃあ、孕めばそれで良かったし、ガキは放っておいてもどうせくたばりやしねえからな。
女(あれ)が孕んでりゃ、そろそろ頃合いだろうが――――……。
ふと、簾の向こうに気配が在った。
人? 随分と気配を消すのが上手い野郎が居たもんだ。
だがよ、殺気が漏れてんぞ。
青いねぇ。
ほっぽってあった襦袢を羽織って御簾を潜る。
閨(ここ)には、置行燈の灯りしかねぇから辺りは暗い。
灯りも届かねえような向こう側は、墨でもぶち撒けたみてぇな闇が茫(ぼう)っと広がってる。
その闇の中に、気配はあった。
なんだ?
ガキか?
おいおい、全く都合がいいじゃねぇか。
先刻(さっき)の夢想が化けやがったか?
阿呆らしい。
「誰だ手前(てめえ)、どこから入ってきやがった」
見張り番は、あとで灸を据えてやらなきゃいけねえ。
閻魔(おれ)の問いに、びびりやがったのか得物を落としやがった。
間抜けめ。
闇に形を潜ませたまま、ガキが言った。
「貴方が私の閻魔(ちちうえ)ですか?」
心の蔵が高鳴った。
おいおい、まさか本当に。
「――――あぁ? 何を言っていやがるんだ? テメェは」
知らず、発した声が苛立つ。
期待させるな。
縦しんば、このガキが閻魔(おれ)のガキだとして。
閻魔(おれ)の権能(のろい)を持ってなくっちゃ意味がねえ。
音もなく、闇からガキの容(かたち)が浮かび上がった。
其処には、閻魔(おれ)と同じ赫瞳(め)をした汚ぇガキが、閻魔(おれ)を睨めつけて居やがった。
「――――――――……」
手前(てめぇ)でも頓狂面(まぬけづら)だとわかる。
咥えた莨が、ほろりと落ちる。
「く」
腹の底が煮えたぎったように熱い。
その熱が閻魔(おれ)の声になる。
ああ、いけねぇ……駄目だ、ちくしょう堪らねえ。
「――――くは、は、はははははははははッ! いーひひひ、ひひ!」
なんだ、こりゃ。
たいそう上等な諧謔(じょーく)じゃあねぇか。
このガキ、閻魔(おれ)そのものじゃあねえか!
ああ、可笑しい。
愉快だ愉快。
成程、成程。
合点がいったぜ、閻魔(おやじ)よぉ!
手前(てめえ)、こんな心持ちだったのかい。
そうかそうか、そうだよなぁ……泣けてくらぁよぉ!
こんなもん見たら、なぁ?
「そーかぁ! やっとかい! 閻魔ぁ、やっとお役御免ってわけだぁなぁ」
爆ぜちまいそうなこの猛けを、呑み砕いて言ってやる。
「おいガキ、テメェの問いに答えてやるよ。ああ、閻魔ぁ今最高に気分がいい! くはっ」
まだ待て、もう少し。
もう少しだからよぉ。
「――――あぁ、手前の言うとおり、閻魔(おれ)はテメェの親父ってことだろうぜ。間違いねぇさ。その赫瞳(せきどう)が証だ」
このガキ、最悪の出目を拾っちまったみてえで気の毒でならねえや。
「その瞳(め)は閻魔(えんま)の権能の一端でなぁ、まぁ言っちまえば嘘か誠かを判別するためのもんさ。閻魔の前じゃ、どれだけ巧妙に隠そうが通用しねぇ。今も視えてんだろ」
「母様が死にました」
――――あぁ? 何を言っていやがるんだこのガキ。
それがなんだってんだ。
それにしたって、息子よぉ……嘘はいけねぇなぁ。
仕方がねえから特別に乗ってやろうじゃあねえか。
「ほーん」
ガキの目つきが変わった。
ああ、なんて糞ったれな因果かねぇ。
閻魔(おれ)も、こんな瞳(め)で閻魔(おやじ)を観てたってわけかい。
それならしょうがねえやなぁ。
いいぜ、息子(がき)。
思い切り恨んで、憎めや。
全部、受け止めてやらぁ。
そんで、さっさと閻魔(おれ)に代わってくれや……。
――――――――――――――――――――――――――――――――—————————
あとがき。
相方への報酬です。
イラスト感謝。
書いていて、めっちゃ楽しかった。
はじめのうちは、結構感覚が掴めなかったけれども、書いているうちに楽しくなりました。
コレをひな型にもっと膨らませて、地獄の解像度を上げていきたいとも思いました。
毎日投稿もあとわずかで終了ですが、年末に短いとはいえ書けてよかったです。
鯉庵
はじめに。
SSになりますが、久々に小説を書いてみました。
短いですが、楽しんでいただけると嬉しいです。
※注意※
人を不快にさせる表現を多分に含んでおります。
場合によっては、気分を害する可能性がございますが、当方は責任を負いかねます。
ご了承の上、閲覧願います。
――――女ってのは、いい。
貪ってる間は、面倒な事を考えずに済むし、何よりガキを孕む。
ああ、早く生まれて来い。
ああ、早く閻魔(おれ)をこの罰(のろい)から解放してくれ。
ああ、早く早く閻魔(おれ)を終わらせてくれ。
簾(みす)の向こうで、淡い灯りが茫(ぼう)っと点っている。
橙色の灯りだった。
簾には、二つの影が映りこんでいる。
男と女の影だった。
二つの影は、激しくまぐわっていた。
「へばってんじゃあねえよ。まだ吐き出し切ってねえんだ。孕むまで閻魔(おれ)は手前(てめえ)の穴ぁ使わせてもらうぜ」
男は女の肉穴に、己の魔羅を乱雑に突き入れながら吠えるように言った。
女はそれに応えない。
呻きながら、喘ぐのみだった。
どうやら気をやってしまったらしい。
ひとでなしの耳をした女だった。
人の容(かたち)をした人に近しい獣の娘である。
髪と同じ灰色の瞳は、光を失って上を向いている。
目尻が赤く腫れていて、泣き喚いたであろう跡が伺える。
力なく項垂れる娘の腕をぐいと己の方へ引き寄せた。
女の肉体が、弓のように仰け反る。
細い首に腕を回して、締め上げた。
「ゆるいぞ、手前の穴ぁ」
ひゅ、と息を吐く音がした。
「あ、が、ぇ……」
閻魔の貌に、狂猛な笑みが浮かぶ。
熱した鉄のように赫(あか)い双眸(そうぼう)が炯々(けいけい)と光る。
「そうだぁ、いいぞぉ……ちゃんと締めろよ?」
存外に優しい声色で、低く囁いた。
女からの返答はないままだったが、解放された腕が狂ったように宙で踊っている。
「よかったなぁ! 手前はまだ生きてる。なら孕めるな」
閻魔の唇が、獰猛に吊り上がった。
捲れた唇の間から、白い歯が覗いて見える。
「ぁ……ぇ……」
女の瞳は涙に濡れて、眼球が真っ赤に染まっている。
「はっ! やっぱり畜生ってのは人より頑丈だなぁ……手前を選んでよかった。きっちり孕めよ?」
魔羅をひと際深く、女の膣(なか)へ潜り込ませて、白く濁った子種汁を好き勝手に迸らせた。
莨(たばこ)の先端を手で包むように囲う。
閻魔(おれ)の掌で、黒い火が瞬いた。
莨に火が点り、赤く熾(おこ)る。
深く紫煙を吸い込んで、肺腑に巡らせる。
鼻と口から紫煙吐き出して、後ろでへばっていやがる女(めす)に目をやった。
肉穴から閻魔(おれ)が吐き出した子種汁が零れて、女(めす)の内ももを這いずり落ちていた。
肉穴が鯉の口みてえに、ひくひくと蠢いて、閻魔(おれ)の子種汁を拒むように、外へ外へと追い出してやがる。
勿体ねぇなぁ。
汚くて、頓狂(まぬけ)な音を立てながら鳴いている。
どうやら肉穴が御釈迦(おしゃか)になったようだった。
「あれじゃ、もう使いもんにならねえなあ……まぁ、ゆるけりゃ、ガキもひり出し易いか。くく」
己の事ながら、随分と下衆な事を言う。
この女も、つくづく運が悪い。
哀れとすら思えちまう。
閻魔(おれ)に選ばれちまった。
別にこの女(めす)が気に入っただとか、惚れただとかそんな殊勝なわけもねぇ。
ただ単に、頑丈そうで、面倒くさい情って奴に振り回されねえ女(めす)だと思っただけ。
どのくらい前か忘れたが、やたらめったら頑丈で、閻魔(おれ)に縋ってきた女(めす)が居たっけなあ。
ありゃ、すげぇ女(めす)だった。
陰気な女で、真っ暗な髪に、真っ暗な瞳(め)をした女だった。
肌は蝋燭みてえに真っ白で、唇だけが真っ赤で……。
その唇の、形だけが笑みを浮かべていやがる。
ながぁい黒髪から覗き見える瞳(め)が、怖気(おどけ)立つほどおっかねぇ女だった。
抱いてやると存外と従順で、具合も良かった。
頑丈だったし、せがむみてぇに絞られたな。
飽きが来るまで食い散らかして、飽きたから捨てた。
閻魔(おれ)にとっちゃあ、孕めばそれで良かったし、ガキは放っておいてもどうせくたばりやしねえからな。
女(あれ)が孕んでりゃ、そろそろ頃合いだろうが――――……。
ふと、簾の向こうに気配が在った。
人? 随分と気配を消すのが上手い野郎が居たもんだ。
だがよ、殺気が漏れてんぞ。
青いねぇ。
ほっぽってあった襦袢を羽織って御簾を潜る。
閨(ここ)には、置行燈の灯りしかねぇから辺りは暗い。
灯りも届かねえような向こう側は、墨でもぶち撒けたみてぇな闇が茫(ぼう)っと広がってる。
その闇の中に、気配はあった。
なんだ?
ガキか?
おいおい、全く都合がいいじゃねぇか。
先刻(さっき)の夢想が化けやがったか?
阿呆らしい。
「誰だ手前(てめえ)、どこから入ってきやがった」
見張り番は、あとで灸を据えてやらなきゃいけねえ。
閻魔(おれ)の問いに、びびりやがったのか得物を落としやがった。
間抜けめ。
闇に形を潜ませたまま、ガキが言った。
「貴方が私の閻魔(ちちうえ)ですか?」
心の蔵が高鳴った。
おいおい、まさか本当に。
「――――あぁ? 何を言っていやがるんだ? テメェは」
知らず、発した声が苛立つ。
期待させるな。
縦しんば、このガキが閻魔(おれ)のガキだとして。
閻魔(おれ)の権能(のろい)を持ってなくっちゃ意味がねえ。
音もなく、闇からガキの容(かたち)が浮かび上がった。
其処には、閻魔(おれ)と同じ赫瞳(め)をした汚ぇガキが、閻魔(おれ)を睨めつけて居やがった。
「――――――――……」
手前(てめぇ)でも頓狂面(まぬけづら)だとわかる。
咥えた莨が、ほろりと落ちる。
「く」
腹の底が煮えたぎったように熱い。
その熱が閻魔(おれ)の声になる。
ああ、いけねぇ……駄目だ、ちくしょう堪らねえ。
「――――くは、は、はははははははははッ! いーひひひ、ひひ!」
なんだ、こりゃ。
たいそう上等な諧謔(じょーく)じゃあねぇか。
このガキ、閻魔(おれ)そのものじゃあねえか!
ああ、可笑しい。
愉快だ愉快。
成程、成程。
合点がいったぜ、閻魔(おやじ)よぉ!
手前(てめえ)、こんな心持ちだったのかい。
そうかそうか、そうだよなぁ……泣けてくらぁよぉ!
こんなもん見たら、なぁ?
「そーかぁ! やっとかい! 閻魔ぁ、やっとお役御免ってわけだぁなぁ」
爆ぜちまいそうなこの猛けを、呑み砕いて言ってやる。
「おいガキ、テメェの問いに答えてやるよ。ああ、閻魔ぁ今最高に気分がいい! くはっ」
まだ待て、もう少し。
もう少しだからよぉ。
「――――あぁ、手前の言うとおり、閻魔(おれ)はテメェの親父ってことだろうぜ。間違いねぇさ。その赫瞳(せきどう)が証だ」
このガキ、最悪の出目を拾っちまったみてえで気の毒でならねえや。
「その瞳(め)は閻魔(えんま)の権能の一端でなぁ、まぁ言っちまえば嘘か誠かを判別するためのもんさ。閻魔の前じゃ、どれだけ巧妙に隠そうが通用しねぇ。今も視えてんだろ」
「母様が死にました」
――――あぁ? 何を言っていやがるんだこのガキ。
それがなんだってんだ。
それにしたって、息子よぉ……嘘はいけねぇなぁ。
仕方がねえから特別に乗ってやろうじゃあねえか。
「ほーん」
ガキの目つきが変わった。
ああ、なんて糞ったれな因果かねぇ。
閻魔(おれ)も、こんな瞳(め)で閻魔(おやじ)を観てたってわけかい。
それならしょうがねえやなぁ。
いいぜ、息子(がき)。
思い切り恨んで、憎めや。
全部、受け止めてやらぁ。
そんで、さっさと閻魔(おれ)に代わってくれや……。
――――――――――――――――――――――――――――――――—————————
あとがき。
相方への報酬です。
イラスト感謝。
書いていて、めっちゃ楽しかった。
はじめのうちは、結構感覚が掴めなかったけれども、書いているうちに楽しくなりました。
コレをひな型にもっと膨らませて、地獄の解像度を上げていきたいとも思いました。
毎日投稿もあとわずかで終了ですが、年末に短いとはいえ書けてよかったです。
鯉庵