ウマ娘の舞台その2
2023.1.30 毎日投稿 第30回
ウマ娘は、メディアミックス作品ごとにパラレルワールドとして、独立していることが多い。
アプリ版とアニメ版でキャラクター性にかなり差違があるのだが、舞台に於いてもそれは、顕著であると感じられた。
特にダイイチルビーに関しては、ヘリオスシナリオに登場したダイイチルビーと印象が異なる。
キャラクターの心情が、独白として語られ、ルビーの苦悩が痛い程伝わってきていた。
心の中を誰も観ることは叶わない。
勿論、ヘリオスもルビーの心を知る由もなく、的確に彼女の地雷を踏みぬいていくヘリオスを観て、観客としての僕は、本当にハラハラしながらそのシーンを観ていた。
僕らは観客の特権として、ルビーの心情を知ることが出来たから、ヘリオスとの明確なそのズレに切なくてならなかった。
ヘリオスはヘリオスで「楽しい」を共有したくて、ただ純粋にルビーを「そちら側」に引っ張ろうとしていたが、それが悉くルビーの地雷を踏みぬく結果になってしまった。
「住む世界が違う」というのが、舞台ではより鮮明に表現されていると思った。
ヘリオスがレースで観ている景色と、ルビーが観ている景色は、全く違っていたのだろうと思う。
それは、ケイエスミラクルも同じで、ルビーとミラクルはともに重荷を背負う世界の住人であったから理解しあえたのだと思う。
ケイエスミラクルは、奇跡を貰った恩を返すために走っていた。
文字通り、命を削りながら。
それは、舞台のレースでもしっかりと表現されていた。
僕の個人的感想に過ぎないことを前提に書くが、レース中彼女の走るフォームがもがき苦しんでいるように思えてならなかった。
残念ながら表情は見えなかったが、斜め横から観た彼女の走る姿からは、今にも溺れ死ぬのではないかという切迫したモノを感じた。
恩を返さなければならないという強迫観念のような、ある種、呪いじみた走る理由。
「これが最後になってでも」というケイエスミラクルの決意は、死を感じさせるほど生々しく映ったのである。
ゼファーが劇中で言った「最高速70キロで走る」というウマ娘の超人的脚力は、文字通り「諸刃の剣」なのだとまざまざ見せ付けられてしまい、胸が詰まる。
演出も相まって、恐怖が倍増してしまった。
しかし、この呪いを解いたのは、ヘリオスだった。
ヘリオスが楽しい走りがどんなものか彼女たちに見せることで呪いを解いた。
アプリ版で、ヘリオスは楽しい以外の走りは無理だと言っていましたが、舞台版ではそのセリフはなかったので、コレも大きな差異だろう。
全体的に大満足の内容であったが、今度は横からではなく正面から舞台というモノを観劇したいと強く思う。
演出がバチッッッとハマると鳥肌が立つほど感動するモノなのかと思えたので、自分の作品作りにも生かしていきたいと思う。
鯉庵