新・魔獣狩り
2023.1.26 毎日投稿 第26回
オーディオブックで、魔獣狩りシリーズを全巻拝聴を終えた。
夢枕獏著の超伝奇長編小説である。
SF要素と密教を絶妙な割合で混ぜた小説だった。
何かのインタビューで夢枕獏先生が「小説家は嘘を書いてもいい職業」という趣旨の発言をしたのが印象的だったが、豊富な知識や学説を引っ張り出して、あのような壮大な小説を書き切ったのだから、心から尊敬する。
こういう風に書くと、上から目線になってしまい困ってしまうが、尊敬というか、本当にそう思っているからそう書くしかないのである。
以前、この毎日投稿でも書いたことだが、僕はこの物語の中でも、とりわけ毒島獣太という男が大好きなのだ。
コンプライアンスでガチガチになった現在では、憚られるような、前時代的価値観だと切り捨てられるであろう男だ。
しかし、そのようなノイズを、彼は笑いながら一蹴するだろう。
それが女の子であれば、彼は優しいセックスを一晩中かけてするだろうし、男が言ったなら「靴下の臭い男の僻みや嫉妬」だと鼻で笑うに違いない。
彼は、下品な男であるが、気持ちいい爽やかな男である。
自分に絶対的な自信があるから、自分以外の男を見下す。
聞こえは悪いだろうが、男というのは本来そういうものだ。
まさに「獣」のような男だと思う。
まぁ、僕の抱いた感想なので、著者がそのように思っているかは知る由もない。
この魔獣狩りという物語は「日本」という国の成り立ちや空海について深く掘り下げられている。
僕は学者ではないので、浪漫に満ちた著者の「解釈」がとても好きになった。
仮に現状の事実と異なる解釈であっても、あくまでフィクションであるのだから、歴史の解釈違い程度の認識でいいと思う。
全体を通して、大満足なのだが、僕のわがままとして、梵VS文成だとか猿翁VS梵だとかの対決も観てみたいと思ってしまった。
梵の死にざまとしては、少々あっけないと感じたので、一度でいいから鳳介との対決もしてほしかったと言うのが本音だ。
僕も自分の作品が「面白い」と思ってもらえるように精進していく所存だ。
鯉庵