昔はよかったと思い始めたら老害への第一歩
2023.2.2 毎日投稿 第33回
昔はよかったと口にし始めたらそれは老害の第一歩だと、僕は考えている。
昔を懐かしむのは悪くないが、今に比べて昔の方がよかったというのは、時代の変化について行けていないという事でもある。
テレビや新聞の衰退がわかりやすい例で「昔のテレビの方が面白かった」という話をよく聞く。
僕も実際にそう思う。
ただそれは、僕らの時代のスタンダードと今の若い世代のスタンダードが変わってきたというだけなのだろうとも思う。
僕はお笑いが好きだったので、御笑いを例にあげると昔は今より下品で暴力的な演出が確実に多かった。
ワンナイR&Rというバライティ番組では、今放送すれば忽ち苦情が殺到し、BPO案件になるだろう。
チョコボール山口や轟先生で検索すれば、そこに答えはある。
人に因るとは思うが、昔はこれらの過激な内容のバライティがかなり多かった。
僕らより上の世代はもっともっと過激だったと思われる。
僕らの世代ではあまり支持されなかった芸人が、今では好感度が高く「人を傷つけない」というのも評価されるように変わった。
僕らの世代や上の世代では「つまらない」と言われていたような芸風も好まれているのだろう。
そもそも「人を傷つけない」という形容が、一昔前はなかったと思う。
容姿弄りや、芸人が酷い目に遭っている場面でも「面白い」と感じるのが自然だったし、そういう演出を観て「いじめ」と同じだとは全く思わなかったのだ。
それは、その芸人の芸風でお約束だったので、その「ひどい目に遭っている」のが芸だったわけだ。
だからそれが当たり前だった世代は「物足りない」と思うのは当然の帰結だろう。
それは時代の変化であって、劣化ではないと思う。
昔の方が良かったと嘆くのは、時代について行けなくなってきているだけなのだ。
創作をするうえでトレンドを追えてないというのは、致命的なので、肝に銘じておきたい。
鯉庵